山梨県統一産婦人科専門研修プログラム管理委員会委員長
山梨大学医学部産婦人科教授
平田 修司
「山梨県統一産婦人科専門研修プログラム」は、平成24年度に運用が開始された山梨県における専攻医研修(いわゆる「後期研修」)のシステムです。平成23年度以前は、山梨県では、山梨大学医学部附属病院、山梨県立中央病院をはじめとする複数の研修病院において専攻医研修が行われていました。一方、初期臨床研修制度の導入を契機に、医師の研修方法が多様化し、専攻医研修の場の選択も多様化してきました。ところが、山梨県においては、県内の専攻医研修病院の数が限られているため、各研修病院が産婦人科専攻医の希望のみに応じて研修の機会を提供することは、産婦人科専攻医の偏在につながるとともに、計画的な専攻医研修のカリキュラムの構築を阻害することになりかねないことが懸念されました。そこで、それらの諸問題を回避して、よりよい専攻医研修を提供することを目的として、県内の分娩取り扱い病院の産科医療の責任者、山梨産科婦人科学会、山梨産婦人科医会、ならびに、山梨県と協議を重ねた結果、「山梨県統一産婦人科専攻医研修プログラム(平成29年度までの名称)」の運用を開始し、現在6年間が経過したところです。これまでに、平成24年度に4名、平成25年度に2名、平成26年度に5名、平成27年度に3名、平成28年度に3名、平成29年度に1名の産婦人科専攻医がこのプログラムの下で研修を開始し、さらに平成30年度には3名の産婦人科専攻医が研修を開始しました。昨年度までに研修を開始した専攻医の先生方の定期的な研修報告によれば、皆、順調に専攻医研修を進めることができております。
さて、この「山梨県統一産婦人科専門研修プログラム」においては、概ね、山梨大学医学部附属病院、山梨県立中央病院、ならびに、市中病院(国立病院機構甲府病院、市立甲府病院、甲府共立病院、山梨赤十字病院、富士吉田市立病院)において研修を行い、産婦人科医として必要とされる知識、技術、ならびに、態度をバランスよく習得することを目標として開始しました。その後、平成26年度からは、3年間のプログラムの中の6か月間に、東京大学医学部附属病院の産婦人科に所属して専攻医研修を行うということが加わっております。さらに、平成29年度からは、市中病院として、山梨厚生病院、諏訪中央病院(長野県)、恵寿総合病院(石川県)、東京北医療センター、済生会高岡病院(富山県)、ならびに、かみいち総合病院(富山県)が加わりました。このような研修病院の拡大によって、大きな視野をもった産婦人科医の育成が可能になるものと確信しています。
この冊子は、「山梨県統一産婦人科専門研修プログラム」において3年間の年限内に到達すべき獲得目標を示すものです。その内容は、日本産科婦人科学会が産婦人科専門医の認定の際に定めている知識、技術、態度の水準です。また、本冊子には、産婦人科専攻医が研修の場を選択する際の参考として、山梨県内で分娩を取り扱っている研修病院の概要の紹介を併せて掲載しました。
山梨県は、産婦人科医師の総数が約110名、年間の分娩数が約6000件弱、と小さな医療圏ですが、そうであるが故に、県内の分娩取り扱い病院ならびに診療所間の連携はきわめて緊密で、すべての産婦人科医が協力して山梨県の産婦人科医療を支える体制が築かれています。そのような背景で、産婦人科専攻医の研修についても、すべての分娩取り扱い病院が一致協力して質の高い研修を提供することが可能となっています。山梨県には豊かな自然があるとともに首都圏から1時間半という利便性の高い県です。医療側だけでなく、各病院、そして、行政側、地域住民も、一人でも多くの初期研修医の先生が、山梨県での産婦人科専門研修を選択することを願っております。
産婦人科を進路として考えている初期研修医の皆さん、山梨県で産婦人科専攻研修を始めようではありませんか。私たち専攻医研修指導医は皆さんの研修指導に全力を挙げて取り組み、皆さんを産婦人科専門医に育て上げることをお約束します。皆さんをお待ちしています。